本文へジャンプペインクリニック科

 当科は,口腔顔面(歯,口,顎,顔面)の痛みと感覚障害,運動麻痺・失調などの診査・診断・治療を行っているペインクリニック専門科です.日本大学歯学部附属歯科病院では,平成15年4月よりペインクリニック(痛みの治療)の臨床を開始しました.当病院は,日本ペインクリニック学会,日本歯科麻酔学会の研修指定病院です.急性痛・慢性痛の専門診療を提供します.


~顔や口の痛みについて~

歯科治療の後で痛みが治まらなかったり,歯科医院を受診したが,痛みの原因が分からなかったと言うことはありませんか?口や顔は,いろいろな原因で痛みが起こる場所です.歯や顎が痛く感じても,実際に歯科的な原因で痛んでいることもあれば,歯科的には問題がないこともあります.

 歯科医院での診察で痛みの原因が明らかでない場合,周囲の組織(特に噛み合わせの筋肉や肩や頸の筋肉)から痛みが生じている可能性や,神経自体の問題で痛みが生じている可能性について検討する必要があります.また,慢性的な痛みが続くと,身体だけでなく心のストレスで痛みが修飾されることも多くなります.このような痛みは,一般的な歯科治療を受けるだけでは軽快しません.痛みの種類を特定して対応することが重要です.慢性の痛みは,形成されるまでに長い時間が経過しており,短時間の治療では簡単に治癒しない場合も多いですが,軽快してゆくための取り組みを継続することが大切です.


 顔や口の慢性痛は,鎮痛薬を内服するだけでは改善しません.抗うつ薬,抗けいれん薬の内服療法や,局所的に薬剤を投与する治療,神経ブロック等を併用して治療にあたります.



~顔や口の感覚麻痺について~

 口の中や口唇の感覚麻痺は,時に歯科治療と関連して生じます.親知らずを抜歯する場合や歯の根っこの先にできた袋やできものを除去する際などに,まれに不可抗力的に神経が障害を受けて痺れることがあります.また,身体の他の部位にできた腫瘍が顎の骨に転移した場合や顎骨内の炎症(細菌感染),ウイルス感染などによって二次的に神経が障害を受けて麻痺を起こすこともあります.頭蓋内,延髄の疾患や自己免疫疾患によって顔に感覚麻痺が出ることもあります.顔の感覚を司っている神経は三叉神経といって脳神経の一つです.口や顔の感覚としては,三叉神経が知覚を司りますが,これに加えて顔面神経が味覚を司っており,特に舌の前方の感覚はこれら二つの脳神経の枝が共同して支配しています.したがって,しばしば口の中の麻痺としては,知覚の麻痺だけでなく,味覚の麻痺も含まれます.

 末梢性の障害の場合には,治療を開始する時期が特に重要になります.痺れが痛みに変化することもあり,これを防ぐ意味でも,また,痺れからの回復を促進する意味でも,発症早期(2週以内)の麻痺の診査と治療開始をお勧めします.



~顔や口の運動障害について~

 口や顎の動きが悪くなって食事や会話がうまくできなくなる代表的な疾患としては,顔の筋肉が麻痺を起こす疾患(末梢性顔面神経麻痺,中枢性顔面神経麻痺,三叉神経麻痺),噛み合わせの筋肉や表情筋が痙攣(ひきつり)を起こす疾患(特発性筋痙攣,ジストニア,テタニー,片側顔面痙攣),顎の関節に障害がある疾患(顎関節症,関節リウマチ等),顎の運動を調整する神経機能に障害があって失調を起こす疾患(ジストニア,ジスキネジア,感覚性失調)などがあります.

 これらの運動障害が生じると,うまく食事ができない,会話ができない等,日常生活に大きな支障をきたします.当科では,これらの運動障害の原因について歯科的に診査し,他の専門科と協力して治療にあたって行きます.末梢性顔面神経麻痺や筋痙攣,ジストニア,顎関節症などでは,末梢への対応(神経ブロック療法,内服療法,理学療法等)で症状が軽快することが見込まれる場合も多く存在します.




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